きっと忘れない

 そのアーティストと出会ったのは、今から15年ほど前でした。
当時学生だった自分は、テレビの歌番組に出演していた彼らを見、CDで曲を聴いているうちに、いつしかその女性ヴォーカリストに惹かれるようになりました。昔の事なので正直に言ってしまうと、彼女のビジュアルと歌詞が、当時自分が思い描いていた理想の異性像、すなわち「素敵な(年上の)お姉さん」と見事にマッチしてしまったわけで。
 自分が思うに、青春時代が甘酸っぱかったかそうでなかったかはさておき、同じような思い出がある方(特に男性)は少なくないのではないでしょうか‥‥?


「きれいなおねえさんは、好きですか。」


今に続く某家電メーカーのCMが始まったのも確かそのころでした。


 甘酸っぱいどころか、甘くも酸っぱくもなくただ苦いだけの青春時代を過ごしてきた(注:一部フィクションです)自分が、彼女の歌にどれだけ癒され、励まされた事か‥‥以来、今まで聞き続けていました。


 それ故、彼女の訃報に接した時は言葉が出ず、ただただ「どうか誤報であって欲しい」と通じるハズのない祈りを続けるだけでした。ましてや最近やや寡作気味だったのが気になっていたとはいえ、ガンを患って闘病中だった事など知る由もなく‥‥。




 享年40。心よりご冥福をお祈り致します。
ありがとう、お疲れさま。「きれいなおねえさん」坂井泉水さん。